東京, 2月15日, /AJMEDIA/
ここ数年、国内で流行しているタイプの鳥インフルエンザウイルスについて、北海道大学の研究グループが野生のカラスでの感染実験を行ったところ、以前流行していたタイプと比べて増殖しやすくなっている可能性があることがわかりました。
専門家はカラスでの感染が拡大した結果、養鶏場などにウイルスを持ち込んでいる可能性があるとして対策が必要だとしています。
国内では2021年以降、鳥インフルエンザに感染したカラスの死体が見つかるケースが急増しています。
北海道大学の研究グループが、ここ数年国内で流行しているタイプの「H5N1」型のウイルスが、カラスでどのように増えるか実験を行ったところ、感染させた3羽すべてが6日以内に死んだほか、ウイルスが肺や気管だけでなく脳や腸など多くの臓器で増殖していたということです。
10年以上前に流行したタイプのウイルスで実験を行った際は、肺や気管以外ではほぼ増殖せず、死亡する割合も低かったということで、研究グループは現在のウイルスはカラスで増殖しやすくなっている可能性があるとしています。
農林水産省によりますと、鳥インフルエンザが発生した各地の養鶏場などの周辺でカラスが目撃されるケースが相次いでいるほか、1月に感染が確認された愛知県常滑市の養鶏場では、敷地内で見つかった死んだカラスからウイルスが検出されたことから、野生のカラスが感染経路になった可能性が指摘されています。
実験を行った北海道大学の迫田義博教授は「ウイルスが変化したためカラスで感染が広がっている可能性がある。カラスは知能が高く、餌が見つかりやすい養鶏場に集まってウイルスを持ち込むおそれがあるので、養鶏場周囲の木を伐採するなど、カラスが集まらないようにする対策を考えるべきだ」と指摘しています。
専門家「野生動物を調査監視し 変化の察知が重要」
環境省が全国で行っている調査で、2010年以降、1900羽以上のカラスでウイルスの検査が行われましたが、2015年まで陽性のカラスは見つかっていませんでした。
また2016年からのシーズンと、その次のシーズンは、それぞれ1か所で複数のカラスへの感染が確認されましたが、多数の感染したカラスが見つかるようになったのは2021年のシーズンからです。
このシーズンは
▽北海道や岩手県など複数の場所で少なくとも117例
▽2022年のシーズンは少なくとも71例
▽2023年のシーズンには少なくとも72例で
陽性が確認されています。
調査を分析した鹿児島大学の小澤真教授は「今後、さらにウイルスが変異して、ハトやスズメといった野鳥や身近な哺乳類に感染しやすくなることも想定し、野生動物の調査や監視を続けてウイルスの変化を察知することが重要だ」と指摘しています。