東京, 9月21日 /AJMEDIA/
日中両政府が中国による日本産水産物の禁輸措置を段階的に緩和することで合意した。政府と東京電力が昨年8月に東電福島第1原発にたまる処理水の海洋放出を始めたことを受け、日本の水産物などを対象に輸入停止措置を導入したのは、中国、香港、マカオ、ロシアの4カ国・地域。禁輸措置で広がった風評被害の抑制には、安全な放出作業の継続と禁輸措置の完全撤廃が課題となる。
「解除に向けた入り口にすぎない」。全国漁業協同組合連合会(全漁連)の坂本雅信会長は20日に発表した談話で今回の合意を「一定の前進」と評価した上で、「早急な解除に全力を挙げてほしい」と政府に要望した。
日本側は、放出の監視に国際原子力機関(IAEA)の協力を仰ぎ、「科学的な安全性」を国際機関に確認してもらうことで、中国に禁輸措置の即時撤廃を要請してきた。これに対し、中国側は「国際的な監視制度を作るべきだ」と主張。今回、中国も参加する形でIAEAによる監視の枠組みを拡充することで、双方の主張に配慮しながら折り合った。昨年11月の日中首脳会談では「協議と対話を通じて問題を解決する」方向で一致しており、岸田政権の退陣前に解決の道筋を付ける形となった。
ただ、これで日本から中国への水産物輸出が回復するかどうかは不透明だ。日本の「農林水産物・食品」の輸出額は2023年に1兆4541億円と11年連続で過去最高を更新した。全体としては好調だが、このうち2300億円超と最大の輸出先だった中国向けは、禁輸の影響で22年と比べ減少した。
政府は中国の禁輸措置導入後、撤廃を働き掛ける一方、対中輸出の主力品目だったホタテの輸出先を中国以外に広げる動きを推進。輸出の脱中国は始まっている。
政府は食品輸出を25年に2兆円、30年に5兆円に拡大する目標だ。中国の禁輸緩和で輸出を阻害するハードルは低下していく見通しだが、禁輸措置で傷つけられたイメージの回復は容易ではない。