東京, 9月2日, /AJMEDIA/
米投資ファンドへの売却が1日決まったそごう・西武では、労働組合が百貨店業界で61年ぶりとなるストライキを決行した。売却後の雇用維持に不信感を募らせ、異例の実力行使に踏み切った格好。労使双方とも影響が大きいストの実行は、近年は年間数十件程度とピーク時の1%にも満たない。だが、百貨店をはじめ経営環境が激変する業界で、潮目に変化が生じる可能性もある。
「初めて見た」「当然の行動」 西武池袋本店でスト―東京
ストは憲法で認められた労働者の権利で、労働条件の改善などを求め、団結して一定期間仕事に従事しないことで経営者側に抗議する手段。厚生労働省の労働争議統計調査によると、半日以上のストはピークだった1974年には5197件実行された。その後、81年に1000件を下回ると、2001年以降は数十件で推移し22年は33件だった。
ストは売り上げの減少のほか、取引先や顧客に影響が及ぶことから企業イメージの低下につながりかねない。一方、経営側はスト期間中に賃金を支払う必要がなく、労働者にとっての打撃も少なくない。バブル崩壊以降、雇用維持に重点が置かれたこともあり、ストで賃金改善を勝ち取る労使対決路線から労使協調への変化も指摘される。
大手企業の労組首脳は「雇用の維持が前提となっていれば、ストに至る事態は想像できない」と話し、再び日本でストが頻発する事態は想定していない。ただ、今回のそごう・西武のストは、経営主体がファンドへと移り、売り場に家電量販店が進出するという大きな環境変化で、従業員に雇用維持への不信が高まったことが背景にある。
岸田政権は看板政策の「新しい資本主義」で、より良い労働条件が得られる成長分野への労働移動を促している。この過程で労働者に雇用への不安が高まれば、協調的な労使関係が変容する可能性もありそうだ。