東京, 10月30日, /AJMEDIA/
栃木県や茨城県を流れる那珂川の上流部では堤防の一部をあえて開けて水をあふれさせることで下流の大規模な氾濫を防ごうとする「霞堤(かすみてい)」の建設工事が、今月から始まっています。
「霞堤」は、川の上流で堤防の一部をあえて開けておき、大雨のときに増水した水をあふれさせることで下流の水位を下げて氾濫を防ごうとする、治水対策の1つです。
4年前、2019年の台風19号では那珂川が増水して下流の茨城県側で堤防の決壊が相次ぎ、大規模な浸水被害が出たことを受け、国が進める緊急治水対策の一環として、上流にあたる那須烏山市に霞堤が建設されることになりました。
工事は今月から市内の下境地区で始まり、大型の建設機械を使って、堤防用の土を盛るための掘削作業などが行われています。
工事を担当する常陸河川国道事務所によりますと那須烏山市の「霞堤」は全長1.8キロにわたり、数年後の完成が見込まれているということです。
一方、工事が進む下境地区では住民にまとまって別の場所に移り住んでもらう「防災集団移転」の計画も進められています。
常陸河川国道事務所の伊藤克雄副所長は「霞堤の建設によって、那珂川流域で洪水のリスクを軽減することにつながるので、地元の住民には、その目的や効果を粘り強く説明していきたい」と話していました。
「霞堤」の建設に複雑な思い抱く住民も
「霞堤」の建設が進められている那須烏山市の下境地区では、過去にも繰り返し水害が起きてきたことから住民は堤防を高くするよう求めてきましたが、始まったのはいわば下流を守るための「霞堤」の建設となり、複雑な思いを抱く住民もいます。
4年前の台風19号では下境地区で那珂川の水があふれて、住宅およそ70棟が水につかる被害が出ました。
住民は国などに、より高くしっかりした堤防を建設してもらえるように、要望してきたということですがこの地区では霞堤が建設され、住民には住み慣れた土地を離れ、別の場所に移り住んでもらう「防災集団移転」の計画が進められることになりました。
地区の住民の中には複雑な思いを抱いている人もいるということで「下境地区」の自治会長の両方恒雄さんは「霞堤を作っても、地域は守られないという思いがあるし、なぜ下流のために犠牲にならないといけないのかと考えている人もいる」と話していました。