東京, 10月21日, /AJMEDIA/
衆院選の投開票が27日に迫り、自民党に単独過半数割れの可能性が出てきた。派閥裏金事件が尾を引き、野党第1党の立憲民主党が政権批判の受け皿として一定の役割を演じる実態が浮かびつつある。結果次第では2012年以来の「一強多弱」の構図に変化が生じ得る。選挙戦終盤に向け、与野党の攻防が激しさを増しそうだ。
「何としても自公で過半数をいただきたい。厳しい選挙だ。どうぞ力を与えてください」。石破茂首相(自民総裁)は20日、大阪府内で公明党候補の応援演説に立ち、自民、公明両党での過半数維持に執念をにじませた。
自民は政権を奪還した12年以降、4回の衆院選で例外なく単独過半数を獲得し、安定した国会運営を進めてきた。しかし、今回は裏金事件に伴う逆風に加え、首相が「熟議後の衆院解散」の約束をほごにして戦後最短の日程で衆院選に持ち込んだことで「変節」批判が噴出している。
与党過半数を衆院選の勝敗ラインと位置付けるのは歴代自民総裁の「伝統」だが、今回は「本当の防衛ライン」(自民関係者)と目されている。
東京24区では前回10万票超の差で次点を引き離した萩生田光一自民元政調会長が、急きょ擁立が決まった立民の有田芳生元参院議員の猛追を許す。旧安倍派幹部の萩生田氏は裏金事件で党役職停止処分を受け、衆院選で自民公認を得られなかった。政府関係者は「『裏金候補』の苦戦が目立つ」と話す。
余波は公明にも押し寄せる。日本維新の会と初めて激突する形となった大阪では擁立した全4選挙区で守勢に回り、埼玉14区の石井啓一代表も野党に接戦に持ち込まれている。自民の裏金候補30人超に推薦を出したことが「共犯」(立民の野田佳彦代表)と批判を浴びており、支持母体の創価学会幹部は「本当に厳しい」と近年ない情勢に表情を曇らせた。
一方、立民は裏金事件を追い風に、どこまで議席を積み上げられるかが焦点だ。03年衆院選では旧民主党が177議席に躍進し、09年の政権交代への一里塚となった。野党関係者は「150議席程度まで伸びれば、展開が変わってくる」と野党内での主導権確立に期待を示す。
もっとも、野田代表が意欲を見せていた他の野党との候補者調整は超短期決戦に伴う時間切れもあって不発に終わり、裏金候補を軒並み追い込むほどの勢いは今のところない。維新や共産党などとの票争奪戦も激しさを増しており、目標とする「与党過半数割れ」への道のりはなお険しい。