東京, 5月22日, /AJMEDIA/
能登半島豪雨をはじめ、毎年のように大きな被害をもたらす線状降水帯について、気象庁気象研究所は航空機で海上の水蒸気を直接観測する取り組みを大学と共同で来月から始めることになりました。
気象庁は、線状降水帯の半日程度前の予測を行っていますが、的中率の低さが課題となっていてメカニズムの解明や予測精度向上につなげたい考えです。
積乱雲が次々と発生し、同じ場所に帯状に連なる線状降水帯について、気象庁は発生が予測された場合、半日程度前に警戒を呼びかける情報を発表しています。
しかし、去年は、9月の能登半島豪雨を予測できないなど、「見逃し」は6割を超え「的中率」もおよそ1割にとどまっています。
海から陸に向かって大量の水蒸気が流れ込む状況を把握するためこれまでも船による観測を行っていますが、関係者によりますと気象庁気象研究所が、航空機を活用し、上空から観測する取り組みを始めることがわかりました。
観測は来月からことし9月にかけて複数回行う予定で、梅雨前線の活動が活発になると予想されたり、暖かく湿った空気の流れ込みが強まると見込まれたりした場合、東海から沖縄の沖合を飛行し、高度およそ1万3000メートルから、「ドロップゾンデ」と呼ばれる観測機器を投下します。
ドロップゾンデは落下しながら上空の気圧や湿度、風速などを観測しデータを送信します。
航空機を使った上空からの観測は、これまで名古屋大学などの研究グループが主に台風を対象に行っていて、気象研究所は今回、大学の研究グループと共同で実施します。
積乱雲が急速に発達する状況を詳しく把握し、将来的には予測精度の向上につなげたい考えです。
専門家「正確に予測できれば失われる命をゼロに」
大雨のメカニズムに詳しく、これまで台風の航空機観測を続けてきた名古屋大学・横浜国立大学の坪木和久教授は、線状降水帯の予測精度が向上するためには航空機による観測が欠かせないと指摘しています。
坪木教授によりますと、これまで線状降水帯ができた際には上空に大量の水蒸気が帯状に流れ込む、「大気の川」と呼ばれる現象が確認されているということです。
線状降水帯を予測するためには海上にある「大気の川」の水蒸気の分布の状況や大気の不安定の度合いなどを詳細に把握することが重要であるものの、大気の川は短い期間で消滅することなどから航空機で複数の地点のデータを取ることが極めて重要だとしています。
坪木教授は来月からの気象研究所の観測にも参加するということです。
坪木教授は「線状降水帯を正確に予測するために必要な『大気の川』の詳細な構造について、データが得られると考えている。半日前から、いつ・どこで・どれくらい雨が降るのかを正確に予測できれば線状降水帯によって失われる命をゼロにできると考えていて、今回の観測はその第一歩だ。長期の継続的な観測が不可欠だと思う」と話しています。