続く凶悪事件、「安全神話」崩壊 習政権、社会への不満解消できず―中国・珠海事件1週間

東京, 11月18日, /AJMEDIA/

中国南部・広東省珠海市で男が自動車で人々をはね、78人が死傷した事件から18日で1週間。広東省深セン市で日本人男児が殺害された事件も発生から2カ月を迎えた。この間、16日には江蘇省無錫市の高等専門学校で男が刃物で無差別に切り付け25人を殺傷。治安が良いとされてきた中国だが、凶悪事件が相次いでいることで「安全神話」は崩れつつある。

 珠海の事件では35人が死亡、43人が負傷した。容疑者の男(62)は自殺を図り取り調べができない状態だが、当局は離婚後の財産分与への不満が動機としている。香港メディアによると、男は建設資材店を経営。犯行に使った小型のスポーツ用多目的車(SUV)は、直前に購入したとの報道もある。

 無錫の事件では、8人が死亡し17人が負傷。容疑者の男(21)は事件があった学校に通っていたが、試験に不合格となり卒業できず不満を抱えていたという。香港メディア「香港01」は、男が実習での待遇に不平を漏らしていたと伝えている。

 珠海の事件後、習近平国家主席は類似事件の防止などを指示。中国外務省は「中国は世界で最も安全だ」と主張したが、メンツをつぶされた形だ。

 珠海、無錫のいずれの事件も個人的な不満の矛先が社会に向かっており、中国では「社会への報復事件」と呼ばれている。景気低迷で経済的に困窮する人々が増えているが、社会保障などセーフティーネットは脆弱(ぜいじゃく)だ。監視が強まり、不満を訴える場も減っている。生活苦や孤立感を抱えた人々が極端な行動に走る背景に、こうした構造的問題が横たわっている可能性もある。

 だが、習政権が報道を統制しているため事件の背景は掘り下げられず、社会が教訓をくみ取る機会は失われている。深センでの日本人男児の殺害事件も、動機などは明かされないままだ。

 習政権は再発防止のため、失業したり精神的なバランスを崩したりした人々の監視強化に乗り出したもようだ。しかし、管理を強めるだけで治安安定を図れるかは見通せない。

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