東京, 10月14日, /AJMEDIA/
政府は13日、現行の健康保険証を2024年秋に廃止し、マイナンバーカードと一体化した「マイナ保険証」に切り替える方針を正式に発表した。暮らしに不可欠な保険証の機能を持たせることで、取得を事実上義務化し、交付率が約5割にとどまるカードの普及加速を目指す。ただ、廃止後もカードを取得しない人への対応は決まっておらず、実現への課題は少なくない。
河野太郎デジタル相は13日の記者会見で、「利便性が高まり、医療の質が向上する」とマイナ保険証の意義を強調した。利用すれば、旅先や災害時に病気になっても、これまでの健診結果や処方された薬の情報を参考にしながら、適切な診察を受けることが可能になる。河野氏は「理解を頂けるようしっかり広報したい」と語った。
政府は22年度末までに、ほぼすべての国民がカードを取得する目標を掲げている。カードがあれば、医療や介護、就労、各種証明書発行に関するサービスをスムーズに受けられるようにする計画だ。これまではカードのメリットをPRすることで取得を促してきたが、保険証として使うために持たざるを得ない状況をつくり、普及促進と行政のデジタル化を一気に進める狙いだ。
ただ、「現場で混乱が生じる可能性がある」(松本吉郎日本医師会長)との指摘もすでに出ている。まずは、現行の保険証廃止後もカードを持たない人への対応が焦点だ。カードを取得しない理由の一つに、個人情報漏えいへの警戒感があるとされ、そうした懸念を払拭(ふっしょく)する必要がある。その上で、カードをどうしても持ちたくない患者が大きな不利益を受けない仕組みが欠かせない。また、生まれたばかりの新生児や認知症患者らへの対応も課題となる。
一方、現行の保険証は医療機関だけでなく、訪問看護や接骨院などでも幅広く利用されており、マイナ保険証に対応した機器の導入を急ぐ必要がある。政府は月内に取りまとめる総合経済対策に、関連施設への支援策を盛り込む方向で調整している。
政府は方針を打ち出したものの、厚生労働省や総務省、デジタル庁など関係省庁による具体的な検討はこれからだ。政府内では「期限を決めたとしても、その時点で相当数の国民がカードを保有していないと保険証廃止は現実的に難しい」(関係者)との声が根強い。カードの普及状況次第では、予定通り実施できるか不透明な部分も残る。