東京, 9月8日, /AJMEDIA/
洋上風力発電事業を巡る受託収賄容疑で秋本真利容疑者(48)が逮捕された。事業への影響は不可避とみられ、先行きには暗雲が漂う。政府は引き続き普及に向けた取り組みを進める考えだが、候補地の自治体などからは「入札プロセスへの疑念を招きかねない」との懸念も出ている。
数千億円規模の巨大事業 洋上発電、参入へ競争激化―日本風力開発は苦戦・受託収賄事件
政府が、脱炭素社会に向けた再生可能エネルギー普及の「切り札」と位置付ける洋上風力発電。2018年に海洋再生可能エネルギー整備法が成立し、気象条件などから発電に適した海域が「促進区域」に指定され、公募で選ばれた業者には一般海域の占用が最大30年間認められることになった。
同法では、誘致を目指す都道府県が国に申告すると「準備区域」となる。その後、環境や漁業への影響、地元住民らの同意状況などに基づき、「有望区域」「促進区域」の順に格上げされる仕組みだが、促進区域のハードルは高い。
風力発電会社「日本風力開発」が参入を目指す青森県の陸奥湾は、19年に県が誘致を申告したが、現在も準備区域のままだ。県の担当者は「ホタテ養殖業への影響や不安が払拭されていないという地元の声がある」と話す。
公募を主管する経済産業省の担当者は「地元の同意を丁寧に取る必要があり、難しい作業だ」と説明。事件の影響について、ある政府関係者は地元の同意が余計に取り付けにくくなる可能性に触れ、「懸念はある」と吐露した。
再エネ業界関係者は、事件について「風力発電業界は歴史が浅く、秋本氏に投資して族議員に育てたいという意図があったのではないか」と指摘。その上で、「再エネ事業は地元の合意を得るのが難しい上、物価高による原料価格などの高騰で厳しい環境にあり、こういう事件が起きると困る」と苦渋の表情で語った。
有望区域に指定されている自治体の関係者は「透明性や公平性について誤解を招かないよう、事業者への対応には留意しなければならない」と気を引き締める。ある漁協関係者は「政治家との癒着で選ばれた業者に携わってもらっては困る」と話し、公正な選定を求めた。