東京, 8月20日, /AJMEDIA/
バイデン米大統領が初めてキャンプデービッド山荘に日韓首脳を迎えた。手厚い歓迎の背景には、対北朝鮮の連携に加え、ロシアのウクライナ侵攻が長引く中、台湾に侵攻する可能性を否定しない中国をけん制する狙いがある。大統領選を来年11月に控え、外交に時間を割く余裕が狭まる中、インド太平洋に広がる同盟網の要である日韓との関係を早期に強化する必要があった。
「私が幸せそうに見えるなら、実際に幸せだからだ」。バイデン氏は会談後の共同記者会見を感慨深げに切り出した。日米韓の関係強化は「副大統領時代(オバマ政権=2009~17年=)からの優先事項」(バイデン氏)。一時は冷え切った日韓関係を踏まえ、「難しい問題を解決するために勇気を示した」と、岸田文雄首相、韓国の尹錫悦大統領をたたえた。
多国間協力を重視するバイデン政権は、オーストラリアやフィリピンを含め、米国を中心とする多層的な同盟網の構築を進めており、日韓はその「核」(ブリンケン国務長官)との位置付けだ。従来、北朝鮮対応を主眼としていた3カ国協力の裾野をインド太平洋へと拡大。中国が軍事力を誇示しながら東南アジアや太平洋島しょ国への影響力を強める中、米国の相対的な力の低下を補う意図が透ける。
会談の定例化や緊急事態に備えた専用回線の活用など、3カ国関係の「制度化」にも重きを置いた。日韓関係が再び悪化したり、多国間の枠組みを嫌ったトランプ前大統領のような指導者が登場したりしても、関係をできる限り後戻りさせないためだ。バイデン氏は会見で、前政権の「米国第一」政策が「われわれを弱くした」と述べ、大統領選で再び戦う可能性があるトランプ氏への対抗意識ものぞかせた。
「歴史的会談」と外交成果を誇ったバイデン氏だが、国内の風当たりは強い。長引くインフレの影響で、米国民にはウクライナへの「支援疲れ」が広がる。「(ロシアの侵攻を)傍観すれば、台湾について中国にどのようなメッセージを送ることになるだろうか」と訴えたバイデン氏の声は、日に日に届きにくくなっている。
さらに、今月に入り、次男ハンター氏(53)と外国企業の関係などを巡る捜査のため、特別検察官が任命された。共和党の一部にはバイデン氏の弾劾訴追を求める声も上がる。大統領再選に向け、内政に注力せざるを得ない状況が待ち受けている。