対ヒズボラ、全面衝突の恐れ イスラエル、強硬貫きレバノン地上侵攻―中東全域で混乱拡大も

東京, 10月1日, /AJMEDIA/

イスラエル軍が2006年以来となるレバノン地上侵攻に踏み切った。対イスラエル攻撃を続けるイスラム教シーア派組織ヒズボラの脅威を取り除く「大義」を掲げた作戦だが、交戦長期化と戦渦の拡大を招きかねない。ヒズボラは早くもロケット弾などで反撃。双方の全面衝突に発展し、中東全域がさらなる緊張と混乱に陥る恐れがある。

 ▽「安全な帰還」優先

 「国境沿いのテロ拠点は、イスラエル北部への差し迫った脅威だ」。軍は1日の声明で、侵攻を正当化した。昨年10月から続くヒズボラの越境攻撃で、北部の住民約6万人が避難を余儀なくされた。ネタニヤフ政権は「北部住民の安全な帰還」を優先し、停戦を促す米国など国際社会の働き掛けをよそに、強硬なシナリオを選んだ。

 ヒズボラは、レバノン各地で起きた通信機器の一斉爆発で多数の戦闘員らが死傷し、指揮命令系統も打撃を受けた。イスラエル軍は間髪を入れず大規模空爆を加え続け、最高指導者ナスララ師ら重要幹部を次々と殺害。組織が著しく弱体化したのを見計らい、地上部隊投入で一気に攻勢をかける賭けに出た。

 ▽目標は緩衝地帯設置

 ヒズボラは同じシーア派の大国イランの支援を受ける「世界で最も重武装の非国家勢力」(米戦略国際問題研究所)。保有するミサイルやロケット弾は最大20万発、戦闘員は「予備役」を含め5万人超と推計される。イスラエルのガラント国防相は一連の空爆で「ヒズボラが20年超で蓄積した数万発のロケット弾や弾薬を排除した」と誇示したが、戦闘能力をそぐには空爆では限界がある。

 イスラエルにとって当面の目標は、地上侵攻でレバノン南部にある兵器の製造・保管拠点を破壊するとともに、ヒズボラを国境から北へ約30キロのリタニ川以北に追いやり、南部に「緩衝地帯」を設けることだ。シンクタンク「エルサレム安全保障外交センター」上級アナリストのヨニ・ベンメナヘム氏は「緩衝地帯なしで戦争は終わらない」と指摘。ただ、南部の国境地域はヒズボラが築いた地下トンネル網が広がり、攻略は難航が予想される。

 ▽求心力保持狙う

 地上侵攻を決めた背景には、イスラエル側の焦りもありそうだ。パレスチナ自治区ガザでの停戦や人質解放に見通しが立たず、南部や北部からの避難生活が続く住民の不満は強い。政権の求心力と支持率を保つためにも、レバノン戦線での成果と抑止力回復は急務だ。

 軍は声明で、地上作戦は「限定的、局所的かつ標的を絞った」と強調した。だが、米CNNテレビによれば、米政府はイスラエル側に「限定的として始まった作戦の規模が拡大し、長期化することへの懸念」を伝達している。ヒズボラは「われわれは勝利する」(ナンバー2のカセム師)と徹底抗戦を宣言しており、ヒズボラと連帯を示すイランや親イラン勢力による対抗措置も予想される。

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