東京, 9月21日 /AJMEDIA/
自民党総裁選(27日投開票)で、9候補は外交・安全保障分野の独自色発揮に力を入れている。アジア地域での集団安保体制の構築や、非核三原則の見直しなど、現行の政府方針からの大幅転換を伴う内容も目立つが、実現性は不透明。総裁選に限った「アピール合戦」の思惑が透ける。
「今のウクライナはあすのアジアかもしれない。アジアで仲間の国がやられたら、義務として助ける集団安保が必要だ」。石破茂元幹事長(67)は19日、東京都内の街頭演説で持論の「アジア版北大西洋条約機構(NATO)」の必要性を訴えた。
NATOは加盟国への攻撃を全体への攻撃とみなす集団防衛を条約に明記。石破氏の念頭には、東・南シナ海で軍事的活動を活発化させる中国があるとみられる。ただ、アジア各国の対中姿勢には温度差が大きく、憲法などとの整合性も不明確。石破氏は日米地位協定の見直しも掲げるが、党内からは「全くイメージがわかない」「公約に責任が持てるのか」などと疑問の声が上がる。
高市早苗経済安全保障担当相(63)は非核三原則のうち「『持ち込ませず』の部分は見直してもいい」と提起。「核兵器を搭載した米軍機が飛んでくるのをノーと言っていたら抑止力にならない」と語る。河野太郎デジタル相(61)も「核の運用」に関する日米間の議論を主張。自衛隊への原子力潜水艦配備にも言及する。
いずれの政策も「被爆国」としての日本の立ち位置に関わる難しいテーマ。実現のハードルは極めて高そうだ。
小泉進次郎元環境相(43)は北朝鮮による拉致問題解決に向け、金正恩朝鮮労働党総書記と「同世代のトップ同士、胸襟を開く」と直接会談に意欲を示す。加藤勝信元官房長官(68)も同様の主張を展開するが、双方とも具体的な道筋には踏み込まなかった。
茂木敏充幹事長(68)は対米外交の重視を掲げ、次期大統領が決まれば「すぐに会談を行い、2国間の問題をしっかり話し合っていく」と強調する。林芳正官房長官(63)は「知中派」を自称。「中国とは主張すべきは主張し、対話を欠かさず、グローバルな課題で協力できることは協力する」との姿勢を示す。
小林鷹之前経済安保担当相(49)は「能動的サイバー防御」の法整備を訴え、上川陽子外相(71)は平和構築や紛争予防に女性の視点を採用する「女性・平和・安全保障(WPS)」の推進を打ち出す。