東京, 9月6日 /AJMEDIA/
バングラデシュで反政府デモ激化を受けハシナ政権が崩壊してから5日で1カ月。ノーベル平和賞受賞者ムハマド・ユヌス氏率いる暫定政権は、ハシナ前首相による弾圧の実態を明らかにするため、「強制失踪」の調査に乗り出すことを決めた。
「歴史的な出来事だ」。8月29日、強制失踪の防止を目的とした国際条約に署名したユヌス氏はこう強調。暫定政権は、元判事ら5人でつくる強制失踪に関する調査委員会も設置した。
国連は、国の指示に基づき個人を拉致したりその所在を隠したりすることを強制失踪と定義し、犯罪と規定している。約15年続いた前政権下では多くの野党関係者や人権活動家が拘束された。こつぜんと姿を消し生死が不明なケースもあり、治安当局の関与が取り沙汰されてきた。
地元人権団体によれば、ハシナ氏が2期目の首相に就いた2009年以降、強制失踪者は推定709人に上る。同氏が辞任し国外脱出してから、秘密裏に投獄されていた数人が解放された。
ロイター通信によると8月7日、強制失踪者とされてきた人権活動家の男性が見つかった。男性は5年前、首都ダッカ近郊で武装した集団に拉致された。政権批判について尋問され暴行を受け、日の光が入らない独房に入れられていた。解放当日は手錠と目隠しをされて車に放り込まれ、ダッカから約250キロ離れた場所で降ろされたという。
国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチは声明で、調査委設置により「バングラデシュは強制失踪者とその家族のため正義を追求する機会を得た」と評価。同委に専門知識を持つ国連関係者を関与させるよう提言した。一方、強制失踪に関わった勢力の妨害を懸念し、円滑な調査実施を危ぶむ声も上がっている。