東京, 10月19日, /AJMEDIA/
国家安全保障戦略など関連3文書改定に向け、18日始まった与党協議は、自民党の麻生太郎副総裁、公明党の北側一雄副代表の重鎮をそろえた布陣となった。焦点となる防衛費大幅増の財源や反撃能力(敵基地攻撃能力)の扱いで高度な政治判断を想定してのことだ。特に数兆円単位と見込まれる財源を巡っては難しい調整が待ち受ける。
与党協議は麻生、北側両氏に自公の幹事長、政調会長らが加わる。実務的な検討作業は、自民党の小野寺五典安保調査会長、公明党の佐藤茂樹外交安保調査会長を中心とするワーキングチーム(WT)が担う。
協議終了後、自民党の萩生田光一政調会長は記者団に「与党として責任を共有する構えをつくった」と説明。公明党の高木陽介政調会長も「財政の問題とか大きな課題が出てくる。自公として責任をしっかり共有してやっていく」と語った。
かつて、集団的自衛権の行使容認を柱とする安保法制を整備した与党協議は、高村正彦自民党副総裁(当時)と北側氏が議論を主導。高村氏は防衛相を経験しており、安保政策にも精通していた。だが今回、防衛相経験者はWTの小野寺氏1人で、影響力は限られる。
こうした布陣としたのは、岸田文雄首相が「防衛力の5年以内の抜本的強化」を明言、防衛力の内容の検討と財源確保を一体で進め、2023年度予算編成過程で結論を出すと約束してきたことが背景にある。公明党の意向も踏まえ、今後2カ月程度で複雑な諸課題に折り合いを付けて合意にこぎ着けるには、麻生氏を加えたハイレベルの協議が欠かせないと判断した。
自民党は、防衛費を5年以内に国内総生産(GDP)比2%以上とすることを念頭に増額を主張。財源として、7月に死去した安倍晋三元首相が赤字国債の活用を唱えた影響はなお党内に残る。
これに対し、公明党は予算規模ありきの議論には否定的で、必要な装備品の調達費用などを積み上げていくべきだとの立場だ。安易に国債に頼らず、恒久財源を確保するよう訴え、北側氏は「法人税増税も一つの選択肢だろう」と語っている。法人税を支持する意見は政府内にもある。
自民党国防族の間には、8年近く財務相を務めた麻生氏に対し、「安全保障ではなく財源論に終始する可能性がある」(防衛相経験者)との警戒感もある。防衛力強化の後ろ盾と頼みにしていた安倍氏を失った同党保守派は「安倍氏の路線を継承しなければいけない」(ベテラン議員)と語っており、着地点は見通せない。