ベネチア国際映画祭 濱口竜介監督の最新作 受賞なるか

東京, 9月9日, /AJMEDIA/

世界3大映画祭の1つ、イタリアのベネチア国際映画祭は現地時間の9日夜、最優秀賞を競うコンペティション部門の各賞が発表される予定で、日本の濱口竜介監督の最新作「悪は存在しない」が受賞するかどうか、注目されます。

イタリア北部のベネチアではことしで80回目となるベネチア国際映画祭が8月30日から開かれています。

最優秀賞にあたる金獅子賞を競うコンペティション部門には、「ドライブ・マイ・カー」で数々の国際的な賞を受賞した、濱口竜介監督の長編作品、「悪は存在しない」など23の作品がノミネートされています。

「悪は存在しない」は、主人公が暮らす自然豊かな村の近くにキャンプの宿泊施設を建設する計画が持ち上がり、それが村の水資源や生態系に影響をもたらすことが明らかになるという物語です。

4日に現地で行われた上映会では、映画が終わると、観客が立ち上がって監督らに7分以上にわたって拍手を送り、作品を称賛する声が聞かれました。

また、革新的な作品を集める「オリゾンティ部門」には、終戦直後の日本を舞台に、戦争が残した傷痕を抱えて生きる人たちの苦しみを描いた塚本晋也監督の「ほかげ」がノミネートされています。

審査の結果は映画祭の最終日となる現地時間の9日夜、日本時間の10日未明に発表されます。

濱口監督「自分も無縁でないと感じる人多いのでは」
現地時間9日夜の結果発表を前にベネチアでNHKのインタビューに応じた濱口監督は、観客から大きな拍手を受けた映画祭での上映会を振り返り、「大きなイベントが終わり、作品を映画祭に温かく迎えてもらえてほっとしているし、キャストやスタッフの仕事のすばらしさがちゃんと伝わって誇らしい」と今の心境を述べました。

今回ノミネートされた「悪は存在しない」では、宿泊施設の建設計画が持ち上がった自然豊かな村を舞台に、地元の人たちと会社側の立場の違いなどが描かれています。

作品の狙いについて、濱口監督は、自然保護を訴える作品ではないとした上で「社会における対話が不足しているのではないか。本来は時間をかけて合意を形成し、納得して進むのが理想だが、実際は時間内に何ができるかが優先されている。日本のある地方での物語だが、自分も無縁ではないと感じる人も多いのではないか」と話していました。

また、映画のタイトルは撮影の準備を進める中で偶然思いついたものだと明らかにし「自然の中には、災害などの暴力は存在するが、自然の側から見るといわゆる悪は存在しない。ただそこに人が入ってくると悪は本当に存在しないのかと考えさせられる。この映画も悪は存在しないことを描いているのではなくて、タイトルと内容の緊張関係や、皮肉みたいなものを楽しんでもらいたい」と作品を見る人にメッセージを送っていました。

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