東京, 10月22日, /AJMEDIA/
アルツハイマー病のリスクを高めることが知られているものの、詳しい仕組みが分かっていなかった特殊な遺伝子が、神経細胞の働きを妨げるメカニズムを慶応大学のグループが、iPS細胞を使った実験でつきとめたと発表しました。
この研究は、慶応大学の岡野栄之教授らのグループが国際的な科学雑誌の「ステムセル・リポーツ」で発表しました。
アルツハイマー病は「APOE4」と呼ばれる遺伝子を持っている人では発症のリスクが3.5倍以上に高まりますが、詳しいメカニズムはこれまで分かっていませんでした。
グループでは人工的に「APOE4」を持たせたヒトのiPS細胞を神経系の細胞に変化させたうえで、正常な神経細胞と一緒に培養しました。
その結果、一緒に培養した神経細胞は、表面にある情報伝達の役割を担う「スパイン」と呼ばれる突起が成長しにくくなり、突起の長さが通常よりおよそ20%短くなっていたということです。
この遺伝子を持つ細胞から多く分泌されるたんぱく質の1つが、スパインの成長を妨げることも確認できたということで、グループでは、このたんぱく質が神経のシナプスの障害を引き起こすことで、アルツハイマー病のリスクを高めている可能性があるとしています。
岡野教授は「アルツハイマー病の起きる重要な過程が分かった研究成果で、新たな治療薬の開発にもつながると考えている」と話していました。