東京, 10月24日, /AJMEDIA/
イスラエル軍とイスラム組織ハマスによる大規模な軍事衝突で双方の死者数が6400人を超え、このうち5000人あまりが死亡したガザ地区では医療状況の悪化が深刻化しています。
一方、地上侵攻の準備を進めるイスラエル軍は、ガザ地区内に入って限定的な軍事作戦を行ったと明らかにし、現地では緊張が高まっています。
※24日(日本時間)の動きを随時更新でお伝えします。
イスラエル軍 大規模な地上侵攻へ準備
イスラエル軍はガザ地区への空爆を続けるとともに周辺に戦車部隊などを集結させ大規模な地上侵攻への準備を進めています。
イスラエル軍の報道官は23日「ガザ地区に深く入って夜間に戦車と歩兵部隊が襲撃を行い、テロリストの部隊を殺害した」と述べ、ガザ地区内で限定的な軍事作戦を行ったことを明らかにしました。
そのうえで「襲撃は行方がわからない人質についての情報を集め、居場所を突き止めることも目的だった」と述べ、人質についての情報収集も狙いだったと説明しました。
これに対しイスラム組織ハマスも23日、ガザ地区南部のハンユニスの付近で、境界線をこえて侵入してきたイスラエル軍の戦車1台とブルドーザー2台を破壊したとSNSで主張していて現地では緊張が高まっています。
死者は6400人超え
今月7日以降のイスラエルとハマスとの一連の衝突では、イスラエル側で少なくとも1400人が、ガザ地区では5087人が死亡し双方の死者は6400人を超えています。
ガザ地区とヨルダン川西岸地区 子どもの死者1903人に
パレスチナの保健省は23日、今月7日にイスラエルとハマスの一連の衝突がはじまってからのガザ地区とヨルダン川西岸地区での死者や医療状況について発表しました。
それによりますと、これまでに死亡したのは、ガザ地区で5087人、ヨルダン川西岸で95人だということで、このうち、双方あわせて子どもの死者は1903人にのぼっているということです。
そして空爆などにより全壊した住宅があわせて2万6684棟に上っているほか、イスラエル軍がガザ地区北部の住民に対し南部への退避を通告する中、これまでに140万人が住まいを追われたということです。
このうち68万人以上は親戚などのもとに身を寄せていて、7万人近くがおよそ150か所ある国連機関の学校に、10万人余りがモスクや教会などに避難しているということです。
医療体制のひっぱくや避難生活によって衛生環境が悪化するなか、皮膚病や下痢などの症状も確認されているとして、戦闘が長引くなか住民の健康状況のさらなる悪化が懸念されます。
ハマス さらに人質2人を解放
こうした中、ハマスは23日、エジプトとカタールによる調停を受けて、ガザ地区で拘束している外国人を含む200人以上の人質のうち2人を解放したと発表しました。
2人はともにイスラエル国籍を持つ、80歳代などの高齢の女性で、ICRC=赤十字国際委員会も解放を手助けして23日の夜にもガザ地区から出られることになったとSNSで発表しました。
人質が解放されるのは今月20日の、アメリカ国籍を持つ親子2人に続いて2回目です。
この2人についてハマスはこれまでに先に解放された女性2人と同じ手順で解放する用意が出来ているにもかかわらず、イスラエル側が受け入れを拒否したとSNSで主張し、イスラエル側が否定していました。
ハマスは「敵が受け入れを拒否しているのは承知しているが、差し迫った人道上の理由により解放した」としています。そのうえで「引き渡しを終えるために調停国との間で合意した手続きのうちイスラエルは8つ以上を違反している」と主張しています。
ガラント国防相 海軍基地で激励
イスラエルのガラント国防相はガザ地区に近いイスラエルのアシュドッドにある海軍基地を訪れ、「まもなく始まる作戦に備えを続けよ。我々は次の段階への準備が完全に出来ている。作戦は陸海空の多面的な作戦になる。君たちが必要だ」と激励しました。
ガラント国防相をめぐっては、このところ地上侵攻の開始時期などをめぐってネタニヤフ首相との不協和音がメディアで報じられていて、イスラエル首相府は23日、国防省と連名で2人の不和を否定する異例の声明を発表しました。
声明は「首相と国防相と参謀総長は明確な目標のもと互いに完全な信頼関係で結ばれている」としたうえで、「メディアは軍と我々の一体性を損なうような誤った報道を控え責任ある態度を示すべきだ」としてイスラエル政府内の意見の相違をめぐる報道に神経をとがらせています。
《ガザ地区の現状》
ガザ地区へ支援物資が搬入 3日連続
OCHA=国連人道問題調整事務所の発表によりますと、23日、水や食料、それに医薬品などの物資を積んだトラック20台がガザ地区に入ったということです。
支援物資には燃料は含まれず、パレスチナ難民を支援するUNRWA=国連パレスチナ難民救済事業機関では、今後2日以内に燃料が尽き、水や食料の供給、医療にも影響が出るおそれがあるとしています。
支援物資が搬入されたのは3日連続で、人道状況の改善に向けて今後も継続的に行えるかが焦点です。
ガザ地区では、イスラエル軍の空爆により推定でおよそ140万人が家を追われ、このうちおよそ58万人が国連が指定した150の緊急避難所に避難しているということです。
避難所1か所あたりの平均の避難者の数はすでに収容基準の2.5倍以上に達し、支援関係者から過密状態だと報告されているということです。
ガザ地区 医療状況は悪化
双方の緊張が高まるなかパレスチナの保健省は、23日、一連の衝突が始まってからの深刻な医療状況の悪化を発表しました。
それによりますとガザ地区とヨルダン川西岸では、あわせて54人の医療関係者が死亡したほか、50台の救急車が攻撃をうけおよそ半数が使えなくなったということです。
またガザ地区では35か所の病院のうち10か所が空爆や燃料不足で機能停止に陥っているということです。
中には外科手術が麻酔無しで行われたり、携帯電話の明かりを頼りに行われたりしている例もあるとしていて人道状況の悪化に歯止めがかからない状態が続いています。
「寝る布団もない状態」
NHKのスタッフが23日南部ラファで取材した国連が運営する学校には、およそ3500人が避難していて35ある教室だけでは避難者を受け入れることができず、校庭にテントを張ったり階段の踊り場にマットレスをしいたりして過ごしている人もいます。
校庭では1日1人あたり1枚だけ配給されるパンを運ぶ子どもや水をペットボトルにくんでいる子どもたちの姿も見られました。
学校に避難している女性は「イスラエル軍はすべてを破壊していて、もうどこにも安全な場所はありません。ここに避難したあとも寝る布団もない状態です」と窮状を訴えていました。
《外交関連の動き》
露ラブロフ外相とイラン大統領が会談 アメリカをけん制
ロシアのラブロフ外相は23日、イランの首都テヘランで開かれた会議の出席にあわせてライシ大統領と会談しました。
イラン大統領府によりますと、会談ではイスラエル・パレスチナ情勢についても意見が交わされ、ライシ大統領は「ガザで起きていることは無防備で罪のない女性や子どもたちに対するひどい犯罪だ。これは欧米の国々による直接的な支援によって行われている」と述べ、イスラエルを支持するアメリカなどを非難しました。
一方、会談の後、記者会見を行ったラブロフ外相は「アメリカは空母や兵士をこの地域に派遣するなど最前線で介入しようとしている。紛争が拡大する危険性が高まる」と述べ、中東でのアメリカ軍の動きを批判しました。
ロシアとイランはともに激しく対立するアメリカへの対抗軸として最近、関係を強化していて、イスラエル・パレスチナ情勢が緊迫化する中アメリカへのけん制も強めています。
英スナク首相 病院の爆発 “ガザから発射の物体の可能性高い”
今月17日にガザ地区北部の病院で発生し、多くの犠牲者が出た爆発について、イギリスのスナク首相は23日、議会で情報機関や兵器の専門家による分析結果として「ガザ地区内からイスラエルに向けて発射された物体、またはその一部によってもたらされた可能性が高い」という見方を明らかにしました。
爆発をめぐって、これまでイスラエル側は関与を否定し、ハマスとは別の武装組織「イスラム聖戦」が発射したロケット弾によるものだと主張しているほか、アメリカやカナダもこれを支持する分析結果を発表しています。
一方、ハマスのほか、エジプト、ヨルダン、サウジアラビアなどのアラブ諸国はイスラエルによる攻撃だとして非難していました。
スナク首相は「物事がとても繊細なときは、使うことばに特に注意し、事実のみに基づいて行動する責任がある。この事件についての誤報は地域に悪影響を及ぼした」と述べ、発生当初の報道でハマス側の主張が大きく取り上げられたことを批判しました。
またスナク首相は、ガザ地区の民間人に水、食料、医薬品、それに燃料を届けるため、2000万ポンド、日本円でおよそ36億6000万円の追加支援を発表しました。