東京, 11月13日, /AJMEDIA/
イスラエル軍の地上部隊がガザ地区最大の病院に迫るなか、現地の保健当局は医薬品の不足や電気が使えなくなったためにこの病院の患者12人が死亡したと発表し、窮状を訴えています。
一方、イスラエル軍は病院の入り口に燃料を置いたと主張するなど、国際社会の批判も高まるなか民間人の犠牲を減らすよう努めているとアピールしています。
※11月13日(日本時間)のイスラエルやパレスチナに関する動きを随時更新でお伝えします。
ガザ地区保健当局 “シファ病院で患者12人死亡”
イスラエル軍はガザ市の中心部にあるガザ地区で最大のシファ病院の地下にイスラム組織ハマス中枢の拠点があると主張し、地上部隊を周辺に展開して激しい戦闘を続けています。
こうした中ガザ地区の保健当局は12日、医薬品の不足や、発電機用の燃料がなくなって電気が使えなくなったことが原因で、シファ病院で12人の患者が死亡したと明らかにしました。
戦闘のためけが人などが病院にたどり着けず命を落とすケースが相次いでいるほか、埋葬ができないまま置かれている遺体も100体に上るとしています。
また別のガザ地区の当局者は、シファ病院の敷地に身を寄せている住民が1500人に上り、戦闘の巻き添えになる危険にさらされていると訴えました。
一方、イスラエル軍はシファ病院の入り口に11日、緊急医療用として300リットルの燃料を置いたものの、ハマスが病院にわたるのを妨害したと主張しています。
またシファ病院にいる病院関係者や患者、それに避難民に退避を通告したとして、病院の担当者と11日の夜に交わした電話の内容とする音声を公開しました。
このなかで軍の調整官は「病院の東側の通りを開放している。東側一帯にイスラエル軍の部隊はいない」と話し、退避経路を説明しています。
さらにイスラエル軍は、今月8日以降、ジャバリア難民キャンプなど8か所で戦闘を4時間休止し、住民に退避のための時間を与えたとしていて、国際社会の批判が高まるなか民間人の犠牲を減らすよう努めているとアピールしています。
WHO事務局長「もはや病院として機能せず」
こうした中、WHOのテドロス事務局長は、シファ病院について「この3日間は電気も水もなく、絶え間なく続く銃撃や爆撃で、危機的な状況がさらに悪化している。悲劇的なことに、亡くなる患者は大幅に増加している。もはや病院として機能していない」とSNSに投稿し、事態を憂慮するとともに早急な停戦の必要性を訴えています。
ガザ地区当局 “一連の戦闘による死者 1万1180人に”
ガザ地区の当局によりますと、一連の戦闘による死者は1万1180人にのぼり、少なくとも3250人ががれきに埋もれたままになるなどして行方がわからなくなっているとしています。
一方、イスラエル側では兵士361人を含む1200人余りが死亡しているほか、およそ240人がガザ地区で人質になっています。
ネタニヤフ首相 米メディアに出演 地上侵攻の正当性アピール
イスラエルのネタニヤフ首相は12日、アメリカのメディアに相次いで出演し、アメリカでも大規模な抗議デモが相次ぐ中、イスラエル軍による地上侵攻の正当性をアピールしました。
このうちCNNテレビのインタビューで、ネタニヤフ首相はハマスによる大規模な攻撃を防げず、市民を守れなかったみずからの責任について質問され「真珠湾攻撃のあと、ルーズベルト大統領は人々に問われただろうか?アメリカ同時多発テロ事件のあと、ブッシュ大統領は問われただろうか?」と述べ、まずはハマスを壊滅させることが優先だと強調しました。
また、ネタニヤフ首相はNBCテレビのインタビューで、ガザ地区で拘束されている人質の解放に向けた交渉の可能性について質問され「可能性はある。軍事的な圧力を強めた結果だ」と述べ、イスラエル軍の地上侵攻の正当性を改めて主張しました。
一方、ガザ市中心部にある地区最大の病院シファ病院で燃料の不足などにより医療活動が続けられなくなっているとされる問題について「われわれは保育器などを稼働させるための燃料の提供を申し出たが拒否された」と述べ、ハマス側が燃料の受け入れを拒んだと主張しました。
パレスチナ赤新月社 “ガザ市北部のクッズ病院が稼働停止”
ガザ地区で燃料不足や攻撃による被害により稼働できなくなる病院が増える中、パレスチナ赤新月社は12日、ガザ市北部のクッズ病院が稼働を停止したと発表しました。
SNSに投稿した動画の中でパレスチナ赤新月社の担当者は「悲しみ、痛み、怒り、不満、そして失望。これが病院への緊急援助の重要性を国際社会や人道機関に訴えてから1週間がたったにもかかわらず、病院の稼働停止を発表せざるをえなくなった私たちの感情だ。国際社会はガザ地区の医療システムの崩壊に対し責任を負っている」と述べ、病院の稼働停止を食い止められなかった国際社会を非難しました。
ガザ地区からの唯一のライブ配信映像が途絶える
通信状況の悪化などでガザ地区からの情報が入りにくくなるなか、国際通信社が設置した無人カメラのうち唯一、ガザ地区からのライブ配信を続けていたAFP通信のカメラの映像が、12日に途絶えました。
フランスのAFP通信の無人カメラは、ロイター通信などの映像がイスラエル南部に設置されたガザ地区の外からの映像に切り替わった後も、ガザ市の中心部の建物からの映像を送り続けていました。
今月4日には「AFP通信のガザ支局は建物への攻撃で大きな被害を受けた」として、爆発音とともにカメラの画面に煙や破片が降りかかる映像もSNSに投稿していました。
しかし、日本時間の12日午後6時半ごろから、配信が途絶えた状態となっています。
最後の映像はガザ市の中心部から、北東の方向を撮影していたとみられ、12日も、市街地の建物の奥に黒い煙がたなびく様子が、うつっていましたが、急に画面が黒くなり、その後、復旧していません。
AFP通信は、映像が途絶えた原因について明らかにしていません。
レバノンとの国境地帯で攻撃の応酬 民間人5人死傷
イスラエル北部のレバノンとの国境地帯では12日も双方による攻撃の応酬がありました。
イスラエル軍などによりますと12日、レバノン側からの対戦車砲による攻撃でイスラエルの民間人5人が死傷し、イスラエル軍は報復として、レバノン南部にあるイスラム教シーア派組織ヒズボラの施設を空爆しました。
このあとレバノン側から15発の砲撃が確認されたほか、迫撃砲による攻撃でイスラエル兵7人がけがをしたということで、戦闘の激化が懸念されています。
イスラエル軍の報道官は12日の会見でガザ地区が優先だとしながらも「イスラエル軍は北部の状況を変えるための作戦計画を持っている。住民が安心して家に戻れないような状態が続くことは無い」と述べ、ヒズボラを強くけん制しました。
イスラエル軍「アイアンドーム」を報道陣に公開
イスラエル軍はガザ地区からのロケット弾を迎撃しているミサイルシステム「アイアンドーム」を報道陣に公開し、防衛体制をアピールしました。
イスラエル軍によりますと、先月7日以降、ハマスなどによるガザ地区からイスラエルに向けたロケット弾攻撃は9500発にのぼり、地上侵攻が始まってからも続いています。
こうした中、イスラエルのミサイルシステム「アイアンドーム」の発射台の一つが12日、詳しい場所などを明かさないことを条件に複数の海外メディアに公開されました。
「アイアンドーム」は発射されたロケット弾の軌道を瞬時に計算し、各地の発射台からのミサイルで迎撃するシステムで、発射台には20連装のミサイルが配備されています。
迎撃の成功率は9割ほどとされていて、アイアンドームの設計にも携わったというイスラエル軍のドロン・ガビッシュ准将は、ガザ地区からのロケット弾の数はこの1週間ほどは減少傾向にあると指摘しました。
ガビッシュ准将は「イスラエルはガザ地区に近い南部はもちろん、北部のヒズボラからの攻撃へも完全な防御態勢をとっている。どんなに時間がかかろうとも、私たちはこの戦争に勝つ決意を固めている」と述べ、防衛体制をアピールするとともにハマスとの戦闘の継続を強調しました。
松野官房長官「情勢注視し外交努力を」
松野官房長官は13日午前の記者会見で「現地の緊張度は刻一刻と増し、情勢は全く予断を許さない状況だ。人道状況の悪化も含め深刻な懸念を持って情勢を注視している」と述べました。
その上で「すでに決定している1000万ドルの緊急無償資金協力に加え、パレスチナに今後およそ6500万ドルの追加的人道支援を行うべく取り組んでいるほか、JICA=国際協力機構を通じたテントなどの支援物資の輸送を開始した。こうした支援を通じて今後も人道状況の改善に向けた外交努力を続ける」と述べました。