東京, 10月30日, /AJMEDIA/
イスラエル軍はイスラム組織ハマスが実効支配するガザ地区を激しく空爆するとともに、戦車など追加の地上部隊を投入し軍事行動を徐々に拡大させています。一連の衝突でガザ地区の死者は8000人を超え、イスラエルによる封鎖で水や食料も不足するなか、国連機関の倉庫に大勢の人が押し入って食料を奪うなど危機的な状況となっています。
こうした中、アメリカのバイデン大統領は29日、イスラエルのネタニヤフ首相と電話で会談しました。ホワイトハウスによりますと、この中でバイデン大統領はガザ情勢をめぐって「イスラエルには自国民をテロから守る権利と責任がある」と改めて述べる一方で「民間人を守ることを優先する国際人道法に沿ったかたちで進められる必要がある」と強調したということです。またバイデン大統領はガザ地区の民間人に対する人道支援物資の提供をすみやかに大幅に増やす必要があると強調したとしています。
※30日(日本時間)のイスラエルやパレスチナに関する動きを随時更新でお伝えします。
イスラエル軍は29日もガザ地区に入っての軍事行動を続けていて、軍の報道官はガザ地区に追加の部隊を派遣したことを明らかにするとともに「我々は計画に従って戦争の段階を進めており、地上での軍事行動を徐々に拡大させていく」と述べ今後、地上戦の規模が大きくなるという認識を示しました。
ガザ地区内では激しい戦闘が続いている模様でイスラエル軍が北部の境界にあるエレズ検問所付近で地下トンネルから出てきた複数のハマスの戦闘員を殺害したと発表した一方、ハマスもガザ地区の北部などでイスラエル軍を攻撃したとしています。
一方、ガザ地区では空爆による死者やけが人が急増していて、今月7日からの一連の衝突による死者についてガザ地区の保健当局は8005人が死亡し、このうち3324人が18歳未満の子どもで2062人が女性だと発表しました。イスラエルの封鎖により水や食料などの不足も深刻になっています。一方、イスラエル側では少なくとも1400人が死亡し、およそ230人がガザ地区で人質にとられているほか、ロケット弾攻撃が続き、連日のようにけが人が出ています。
UNRWA=国連パレスチナ難民救済事業機関はガザ地区の中部と南部にある複数の倉庫や配送センターに大勢の人が押し入り、配給用の小麦粉や生活必需品が奪われたと明らかにしました。
UNRWAの現地事務所の所長は「3週間にわたる戦争とガザ地区に対する厳しい封鎖の結果、秩序が崩壊し始めていることを示す憂慮すべき兆候だ。人々はおびえ、いらだち、そして絶望している」と住民の窮状を訴えました。
=更新中=
ガザ地区の通信サービス“徐々に復旧” 現地の通信会社
パレスチナで携帯電話事業などを行う通信会社は、ガザ地区で27日以降遮断されていた電話やインターネットの通信サービスが徐々に復旧しているとSNSで発表しました。ガザ地区では27日、イスラエル軍による大規模な軍事作戦が行われ、パレスチナの通信会社は激しい空爆によって通信が途絶えていると発表していました。
“ガザ地区 水供給のパイプライン3本中2本再開”
イスラエルの地元メディアによりますとガザ地区に流入する物資などを管理するイスラエル国防省の調整組織はガザ地区に水を供給している3本のパイプラインのうち、2本を29日までに再開したということです。供給される水の量はイスラエルが軍事衝突以前に供給していた量の半分ほどだということです。イスラエルは今月7日のハマスによる大規模な襲撃をうけて、ガザ地区に対する封鎖の一環として、襲撃の2日後から水の供給を止めていました。
ネタニヤフ首相“ハマス襲撃事前把握できず”投稿 批判受け謝罪
10月7日のイスラム組織ハマスの大規模な襲撃について、イスラエルのネタニヤフ首相が情報機関などは事前に襲撃の可能性を把握できていなかったとSNSに投稿して批判が相次ぎ、謝罪に追い込まれる事態となりました。
ネタニヤフ首相は29日、自身のSNSに「いかなる状況下、どの段階であってもハマスの襲撃について忠告を受けていなかった。情報機関のトップもハマスを抑止できていると信じていて、襲撃が起きるまで軍関係者の評価は変わらなかった」と投稿しました。
これについて、戦争管理内閣に加わる野党党首のガンツ前国防相はSNSに「戦時中こそ、リーダーが責任をとるべきだ」と投稿し、ネタニヤフ首相に発言の撤回を求めました。
ほかにも、野党議員などから「責任逃れだ」とする批判が相次ぎました。これを受けて、ネタニヤフ首相は投稿を削除した上で、再びSNSに「私が間違っていた。発言は不適切であり、謝罪しなければならない」と投稿し、司令官や前線で戦う兵士に寄り添う姿勢を強調しました。
パレスチナ赤新月社 “直ちに退避するよう警告する連絡が”
パレスチナ赤新月社は、ガザ地区の北部にあるアルクッズ病院に、イスラエル当局から直ちに退避するよう警告する連絡があったと発表しました。それによりますと29日朝から、病院から50メートルほど離れた場所で攻撃が行われているということです。
WHO テドロス事務局長 現地の差し迫った状況伝える
WHO=世界保健機関のテドロス事務局長は通信が途絶えていた現地のスタッフとの連絡が29日朝にとれたことを明らかにした上で「この2晩は空爆が多く、非常に緊迫していたようだ。燃料や水、電気、通信手段、それに避難するための安全な場所もなく、病院は患者であふれかえっていて、より多くの物資が必要だ」と投稿し、現地の差し迫った状況を伝えています。その上で「私たちは、即時の人道的な停戦と、医療施設や人道支援に関わる人たちの保護、そして、恒久的な平和に向けた取り組みを再度呼びかける」と訴えています。
《各国での動き》
EU加盟国首脳や高官から イスラエルに自制求める声
イスラエルには自衛の権利があるとしているEU=ヨーロッパ連合の加盟国首脳や高官からも、イスラエルに対し、ガザ地区の市民の命を守るため自制を求める声などが上がっています。
オランダのルッテ首相は29日、イスラエルのネタニヤフ首相と電話で会談したあとSNSに投稿し、イスラエルへの支持を続けることが必要だとしながらも「世界はガザ地区の人道状況を非常に懸念しながら見守っている。地域で緊張が高まることを防ぎ、罪のない市民の命が可能なかぎり失われないようにするには、軍事行動の自制が必要だ。自衛の権利を損なうものではないが、イスラエルには釣り合いをとって行動していると示すことが求められている」と強調しました。
またEUの外相にあたるボレル上級代表も28日の投稿で「激しい砲撃が続くなか、ガザ地区は停電し孤立した状態にある。子どもを含む、あまりに多くの市民が殺されている。これは国際人道法に違反するものだ」と非難しました。