「空振り覚悟、早めの避難を」 木密地域での同時多発火災―関東大震災100年

東京, 9月2日, /AJMEDIA/

関東大震災では約10万5000人の死者・行方不明者が出たが、二次災害である火災による死者が9割近くを占めた。特に陸軍被服廠跡(現在の東京都墨田区)では竜巻のような「火災旋風」が発生し、約3万8000人もの犠牲者が出た。専門家は「同時多発火災の際は、空振り覚悟で早めの避難を」と呼び掛ける。
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 当時の東京市は木造住宅密集(木密)地域が広がり、地震発生が正午前で風が強かったこともあって、直後から各地で火災が起きた。東京理科大総合研究院の関沢愛教授(都市防火)は「火災が集中した区域で早期に延焼範囲が合流し、避難経路を奪った」と説明する。内閣府中央防災会議の報告書などによると、被服廠跡は発災3~4時間後には延焼した火災に囲まれて外部への逃げ道を失い、そこへ火災旋風が襲い掛かったとされる。
 消防研究センター(東京都調布市)の篠原雅彦主幹研究官によると、火災旋風の原因は未解明な部分が多い。篠原氏は「大きな火災ではより大きな火災旋風が発生する」とみており、「馬や大八車が飛んで回っていた」などの証言が残る被服廠跡のような規模の火災旋風は、大規模火災の影響とみられる。事前に予測して避難することが難しいため「まずは出火をさせない。そして大きな火災からは逃げる」と提言する。
 関沢教授は今後大規模地震が起きた際、都心周辺に広がる木密地域での延焼の危険性と、消防隊が不足して全ての火災に対応できない可能性を指摘する。都によると、木密地域は2020年時点でなお約8600ヘクタール残る。
 一部が都の木密地域に指定されている大田区の「山王3・4丁目自治会」は、日頃から公園などに消防ポンプを配置し、約30人の「防災協力隊」が訓練を続けるなどして市街地火災に備えている。8月20日に開催された年1回の「防災こどもまつり」では、協力隊が消防ポンプの使い方を実演したり、子どもたちが消火器を実際に体験したりしていた。地域を管轄する高宮恭一・大森消防署長は「この一帯は高低差があり、道が狭いため消火しづらい」と話す。自治会の鈴木英明会長は「『自分たちの町は自分たちで守る』がキーワード。楽しい地域のお祭りで防災に触れてほしい」と力を込める。
 地域でのこうした活動について、関沢教授は「延焼火災を減らす上で重要」と指摘する。火災が起きた際には、できるだけ初期消火に取り組むことを推奨する。
 ただ、火が迫ってからの避難では間に合わない。遠方の火災は煙しか見えない。四方八方におよそ3本以上立ちのぼっているのが見えた時は、逃げ道が失われる危険性があるという。広域避難場所を事前に複数把握しておき、早めに避難することが重要だと語った。

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