東京, 1月10日, /AJMEDIA/
アメリカ・ハワイ島にある日本の「すばる望遠鏡」に、国際研究プロジェクトが開発した新たな観測装置が取り付けられ、宇宙の大きな謎とされる暗黒物質=ダークマターの解明などを目指して、ことし3月から本格的な観測が始められることになりました。
これは、東京大学の村山斉教授が代表を務める国際研究プロジェクトが10日、都内で会見を開いて発表しました。
プロジェクトでは、アメリカ・ハワイ島の山頂にある日本の「すばる望遠鏡」に、100億円以上をかけて開発した新たな観測装置を設置し、ことし3月から本格的な観測を始めるということです。
新たな観測装置は「PFS」と呼ばれ、すばる望遠鏡の広い視野に収まる、およそ2400の天体の光を、「分光観測」と呼ばれる手法で、同時に観測することで、星の運動の様子などを詳しく調べます。
プロジェクトによりますと、この装置を使えば、これまで2000年かかった観測を1年で行うことが可能になり、宇宙の大きな謎とされる暗黒物質=ダークマターの性質の解明や、宇宙を加速・膨張させている未知の力にあたる、ダークエネルギーの理解につながることが期待されるということです。
村山教授は「宇宙の成り立ちから進化、運命までを全体として明らかにしたい」と話していました。
解明を目指す暗黒物質=ダークマターとは
国際研究プロジェクトが解明を目指す暗黒物質=ダークマターは、宇宙空間に存在すると考えられているものの、直接観測することができないため宇宙の大きな謎とされています。
プロジェクトの代表を務める東京大学の村山斉教授によりますと、ダークマターの性質に関しては、どのような質量をしているかもわかっていない一方で、天文学の分野では、ダークマターが存在しなければ説明が付かない観測データが、相次いで確認されているということです。
ダークマターによる重力の働きがなければ、宇宙に星や銀河が存在することはなく、生命を育む地球などの太陽系も形づくられなかったと考えられることから、村山教授はダークマターについて“私たちのお母さん”のような存在だとしています。
国際研究プロジェクトでは、ダークマターの重力の影響を受けて運動している、天の川銀河にある数十万個の星の運動の様子を詳しく調べることで、直接観測することができないダークマターの正体に迫ることにしています。
村山教授は「この装置を使うと、星1個1個がどのくらい速く動いているのかが正確に測れるようになります。星の動きを1個1個調べていくと、そもそもダークマターがどういうふうに集まっているのかが読み出せるはずです。2400個の天体の動きを同時に観測でき、いままで2000年かかった観測が1年で可能になるこの装置を駆使して、私たちの“お母さん”にぜひ会いたい」と話しています。