東京, 10月23日, /AJMEDIA/
「再審開始です」。23日午前10時すぎ、前川彰司さん(59)の再審開始決定が伝えられると、名古屋高裁金沢支部(金沢市)の前に集まった支援者らから「おめでとう」と歓声と拍手が湧き起こった。同支部から姿を見せた前川さんは弁護団らと抱き合いながら、「ありがとうございます」と喜びをかみしめた。
「闘いは続きますが、一つの区切りが付きました」。前川さんは両手を挙げ、喜びを表現した。記者団に「ほっとしている。心からお礼を申し上げたい」と心境を語った。
この後支援者らは名古屋高検金沢支部を訪れ、異議申し立てを断念するよう要請した。市内で記者会見した弁護団の吉村悟団長は「極めて堅実で正当な認定だ。膨大な捜査報告書が決定の決め手となっており、異議申し立ての余地は常識的にはない」と強調した。
事件から38年無実を訴え続けた前川さんについて、吉村団長は「事件当時20歳だったのがもはや59歳。父は91歳。母は悲嘆のうちに亡くなった。このような悲惨な冤罪(えんざい)被害の救済を遅らせることは、人道上も許されない」と訴えた。
会見に同席した村岡啓一・白鴎大参与(刑事法)は、袴田巌さんが再審無罪となった静岡一家4人殺害事件で示された「証拠物の捏造(ねつぞう)」ではなく、「供述証拠の捏造」が認められたと指摘。「うそが重なって有罪認定をしてしまう危険性が極めて明確に示された事件だ」と述べた。
前川さんも会見で袴田さんの再審無罪に触れ、「再審に対して新しい風が吹き始めている。警察への目線も明らかに変わってきており、(決定が)再審の風をより後押しすることになるのではないかと期待している」と語った。